「損失回避(Loss Aversion)」という心理学の言葉があります。
簡単にいうと、
人は、得をする喜びよりも、損をする苦しみを強く感じる
という考え方です。
例えば、1万円をもらったときの嬉しさと、1万円を失ったときのショックでは、同じ1万円でも、失ったときのほうが強く感じる。
人間には、そういう感情があると言われています。
そして、この「損をしたくない」という気持ちは、お金だけではなく、モノを捨てられない心理にも関係していると言われます。
「いつか使うかもしれない」
「まだ使えるのに」
「高かったから捨てるのはもったいない」
「思い出があるから」
これも考えてみれば、今持っているものを手放すことを「損」と感じている状態なのかもしれません。
でも、まるぶん不動産は、自分自身を振り返ってみると、少し不思議なことに気がつきました。
まるぶん不動産は、お金に対しては、
まだまだ損失回避の感情が強い。
ところが、モノに対しては、まるぶん不動産は、
それほど強くないような気がするのです。
むしろ、モノを少なくすることに気持ちよさを感じる。
処分できたときには、
「よし、減った!」
という達成感があります。
一つ捨てることが「一つ失った」ではなく、
「一つ、身軽になった」
という感覚なのです。
「捨てると快感がある」という娘
身近なところにも、そんな人がいました。
私の娘です。
娘は、私以上にミニマムな生活を好みます。
必要以上にモノを持たない。
使わないものは手放す。
そして、部屋の中に余計なものを置かない。
そんな暮らしが、どうやら好きらしい。
そこで、あるとき娘に聞いてみました。
「モノを捨てると、快感を感じる?」
すると、
「イエス」
でした。
なるほど……。
これは、かなり大きな違いなのかもしれません。
モノを捨てることを、
「失うこと」
として感じる人と、
「身軽になること」
として感じる人。
同じ「捨てる」という行動でも、頭の中ではまったく違うことが起きているのではないでしょうか。
「片付けなくちゃ」と思っているのに、できない
もちろん、多くの人は、
「片付けなくちゃ」
「掃除しなくちゃ」
「そろそろモノを減らさなくちゃ」
と思っているのではないでしょうか。
でも、思っていることと、実際にできることは違います。
ここが、片付けの難しいところです。
まるぶん不動産は、この違いの一つに、もしかすると損失回避の感情の強さがあるのではないかと思っています。
「捨てたら、いつか困るかもしれない」
「また買うことになったらもったいない」
「まだ使える」
「せっかく買ったものだから」
そう考えると、手放すことがどんどん難しくなります。
反対に、
「使っていないものを持っているほうが損」
「なくても困らないなら、なくてもいい」
「モノが減ったほうが暮らしやすい」
という考え方になると、捨てることへの抵抗感はずいぶん変わってきます。
「捨てる」が「得する」に変わる
もしかすると、モノを減らすことが上手な人は、
「捨てる=損」ではなく、「捨てる=得」
というマインドになっているのかもしれません。
モノを一つ捨てたら、収納場所が一つ空く。
探す時間が減る。
掃除がしやすくなる。
部屋が広く見える。
頭の中まで少しスッキリする。
そう考えると、捨てることは「失うこと」ではなくなります。
むしろ、モノを手放すことで、時間や空間や心の余裕を手に入れている。
そう考えると、「捨てると快感」という娘の答えも、少しわかるような気がします。
これは、人に押し付けるものではない
とはいえ、
「モノを捨てるのが快感になるまで頑張りましょう!」
と言われても、なかなかそう簡単にはいきません。
モノには、それぞれの思い出や価値があります。
人によって大切にするものも違います。
ただ、
「片付けたいのに片付けられない」
という人が結構います。
それは、「自分は意志が弱いからだ」
ではなくて
もしかすると、
「手放すことを損だと感じる気持ちが
強いのかもしれない」
と考えてみる。
そして少しずつ、
「捨てると損をする」
から、「捨てると、何かを得られる」
へと見方を変えてみる。
一気に変わる必要はありません。
まずは、使っていない小さなモノを一つ手放してみる。
そして、空いた場所を見てみる。
「なくても困らなかったな」
「ちょっとスッキリしたな」
その小さな体験が、次の一つにつながっていくのかも
しれません。
モノを減らすことは、単純に「捨てる技術」だけではなく、
モノを手放すことを、自分の中でどう捉えるかという
マインドの問題なのかもしれません。
まるぶん不動産は、お金については、まだまだ「損したくない」という気持ちがあります。
よく言うお金のメンタルブロックです。
でも、モノについては、
「減ったら、ちょっと嬉しい」
と思えるようになりました。
この違いは何なのだろう。
そして、モノを減らすことが苦にならなくなったとき、片付けは「やらなくてはいけないこと」から、
「やりたくなること」に変わるのかもしれません。
「捨てると快感」
娘のこの一言。
案外、モノを減らす暮らしの本質は、
ここにあるのかもしれません。


